Gesanmedo ――Tibetan Highlands Elementary School Construction Fund NPO

・ チ ベ ッ ト 族 の 風 習 ・
チベットの独特の葬儀

 誕生の祝いや婚礼は、人びとに祝福される華やかな儀式である。葬礼は、人生の最後をしめくくる儀式であり、人びとは哀悼のうちに、見送ってくれるだろう。チベット族の葬礼は、漢族たちが誇張するほど奇異なものではない。ただ、それなりの一定のやり方があるのは事実である。チベットは広く、日本の約四倍である。このため各地方により、葬儀のやり方も異なるが、ここでは天葬、水葬、火葬、土葬、塔葬の五つを紹介する。

 天葬すなわち鳥葬は、大多数の一般の人のための葬儀である。ある人が死んだとする。その死体はしばらく、部屋の片すみの敷物の上に安置される。敷物には、上ないし不用となった寝具などをもちいる。それは仏教の考えによるもので、死後、霊魂と死体は別べつにその家を去るからである。霊魂がいつまでも家のなかにいては、困ってしまう。死体を運びさったのち、敷物としていた主なりを十字路に捨てれば、霊魂は消えさるという。死後の3〜5日間、僧侶をよんで朝から晩まで、枕経をあげてもらう。親戚や友人たちが弔問に来るのも、この期間中のことである。

 死人のでた家では、玄関に一つの赤い缶をつるす。缶の口は、ヒツジの白い毛かハタでさんくんさんそふさいであり、そのなかには三筆、三乗、ツァンパがいれてある。三章とは、血.肉.脂のことである。三乗とは、乳.バター.チーズのことである。それらを缶のなかに、毎日すこしずついれる。死んだ人の鬼に食べさせるためである。人びとの考えによれば、人間は死んだあと鬼になるが、霊魂がすでに肉体を離れているため、考えることもできず、時間どおりに食事をすることもできない。このために、生きている家族が時間をみて食事をやるのである。

 数日後、出棺の儀式がある。それは一般に早朝、まだ夜が明けないうちにはじめられる。まず死者の衣服をはぎ、なわでしばる。その上から、白いプル一毛織物一をかける。死体のところから玄関口まで、ツァンパをまきながら、一本の白い線を引く。この線にそって死者をかつぐのが、孝行をする者の責務である。死体は玄関で、天葬をする人たちに手わたされる。彼らが死体をかついだ瞬間に、やらなければならないことがある。それは死者とほぼ同年令の人にたのんであるのだが、ホウキで線になっているツァンパをかき集めることである。ツァンパ、死体を置いた敷物、それにホウキを、用意しておいたカゴにいれる。このカゴをもち、死者のあとについて、十字路まで行く。その十字路にカゴを放りだせば、鬼を送ることができるのである。

 家族はこの出棺に全員で参加するが、葬儀をする場所へは行かない。一、二の親友と、友人たちが野辺の送りをしてくれる。天葬をする者や、野辺送りに参加する人たちは、絶対にうしろを振りむいてはならない。この人たちはまた、その後の二日間、死者の家を訪ねてはならない。それはタブーである。死者の霊魂がもとの家にもどり、災難をもたらすことを恐れるからである。

 天葬をする場所は一般に、街はずれの山のかげである。死体をまず、大きな自然石の天葬台の上に安置する。その周囲にマツなどの香木を積みあげる。その上にツァンバ、三章、三素をまいてから、点火する。煙がもうもうと立ちこめるが、それは「天の鷹」すなわちハゲワシに、「通知」するためである。ハゲワシには、この煙を見ると食物をさがしだす習性がある。

 このときから、天葬が開始される。まず死体の背中から解剖していく。死者がもし僧侶であれば、それに先だち、背中に宗教上の模様をつける。解剖は背中から腹にいたり、内臓をとりだし、肉を切りきざむ。頭の皮をはぎ、頭蓋骨を割り、骨をくだく。それらをツァンパでこねて、だんご状につくる。ハゲワシにあたえるのは、まず骨の部分から、そして肉の部分である。こうして死体をすこしものこすことなく、「昇天」させるのである。

 水葬は一般に、こじきや寡婦、孤児などの経済的に恵まれない者のための葬礼である。まず死体を川岸まで運び、関節のところで切断してから、川のなかに投げこむのである。場所によっては、死体を白い布でつつみ、切断せずに、投げこむこともある。一種の簡便法である。チベット南部の深い谷の地域では、ハゲワシが飛来することはなく、大部分がこの水葬である。

 土葬は一般に、ハンセン病、タンソ病、天然痘などで病死した人や、殺人や放火などを犯した者、刀や槍で殺された者のための葬礼である。こうした場合、習慣的、法律的に天葬や水葬をすることが許されず、地中に穴をほり、そこに死体を埋めるしかないのである。その意図は、そうしたことが再び起こらないように願うためである。

 火葬は、活仏や貴人、高位高官のための葬礼である。死体を焼いたあとの遺骨や遺灰は、高い山の上や、大きな川のなかにまく。

 塔葬は、声望のある活仏のための葬礼である。まず死体によく塩をこすりつけ、乾燥させる。それから大量の香料や貴重な薬物をぬり、霊塔のなかで法体を保存するものである。こうした葬儀は、ダライニフマやパンチェンニフマ、大活仏など、ごく一部の者だけが享受することができる。場合によっては、活仏の死体を火葬にした後、その遺骨や遺灰を塔葬にすることもある。

 


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――――BBC世界の屋根探険会 烏里 烏沙 制作・2003年3月8日――――