Gesanmedo ――Tibetan Highlands Elementary School Construction Fund NPO

 

ゲーサンメド小学校第三期工事報告
――小学校建設現場監督担当 鈴木 晋作

 

一. 工事報告 

現地入り――八月三日に日本を離れ、六日より理塘に入りました。年最大の行事「国際競馬祭」ちょうど終わる頃で、七日から早速、職人・材料の手配・確認のため作業に入りました。街で再会した友人からは、競馬祭を見逃すとは、なんと惜しいことをするのだと言われましたが、競馬祭の期間中は、冬が厳しく閉ざされる理塘の人々にとって「お正月」のようなものなので、プロジェクトは進みません。

工事の進行――今回は、昨年の厳しい工事を通してできた、曲登郷の地元政府と小学校、付近の人々との信頼関係によって事前の準備、事業の進行とも円滑に行われました。今回の準備は、曲登郷のザシ曲登郷書記(校長)を始め、郷政府の幹部達が率先して行われました。工事期間中も、物品の輸送、学生宿舎二段ベッドの組立、不在時の現場監理等をゲーサンメド小学校の先生達と協力して行いました。おかげでほぼ予定通りに工事は、全うされました。

第三期工事の完了――内装工事一四六.六F(食堂三一.五F、学生宿舎四七.四F、教師宿舎六七.七F)、グラウンドコンクリート打設工事六五四F、正門工事、購入品 二段ベッド二五台・寝具(五〇人用)、食堂用品、宿舎学生衛生用品など

二年目の校舎――内装工事がようやく終わり、寄宿生活に基本的必要なものも揃い、晴れてゲーサンメド小学校完成!と言えるでしょう。今年は、先生達も自ら気の付いたことを、どんどん伝えてくれます。それがこの校舎を維持管理していくことと繋がります。彼らの意識が、実際の今回の工事にも繁栄しています。たくさんの人に見守られながら、小学校の建物も教育環境もすこしずつ良くなっていくことでしょう。

なお今工事は、当基金会会員の皆様の寄付金と日本郵政公社の国際ボランティア貯金の加入者からの寄付金によって行われました。今回は、前年にも増して現地での感謝・歓迎の言葉を地元からもらいました。

二. 新しいグラウンドで授業・絵を描く・遊ぶ

昨年は、小学校完成後まもなく曲登郷を離れてしまい、新校舎での学校生活ぶりをじっくりと見届けることはできませんでした。九月一日より本格的に授業が始まり、すこしずつ子ども達が集まってきます。グラウンド工事が終わり、ある晴れた日の午後、新しいグラウンドで写生大会を行いました。四、五人一組の班に分け、理塘で手に入れたクレヨンと八〇cm×一〇〇cm程度の大きな紙をグラウンドの好きなところに広げました。自分達の村や学校の生活などを好きなように描きました。

点描画のような細かい絵を描く子、いきなりクレヨンで大胆に大きく描く子、画面を割り振ってちゃんと全体を設計し他の子に指示する子、日差しが強いにもかかわらずずっと描き続けている子、すぐに止めて人の絵ばかり見に行く子。

ひとしきり描き終わったところで、描いたものにチベット語もしくは漢語で名前を書きました。そして最後に同じ班の隣の子の顔を描き、全員の顔と名前を記入しました。とても愉快な午後の課外授業でした。

三. 学校生活あれこれ。見たこと・気が付いたこと

九月一五日現在五〇余名の学生が来ています。昨年は、始めて見るたくさんの他の子どもとの集団生活に動揺し(多数の子ども同士で遊ぶことの慣れていない遊牧民の子も多い)、泣き止まなかった子も一年経って、音楽の時間にみんなの前で堂々とチベット民謡を歌っています。今年の春からは、理塘の街の寄宿制の学校から地元曲登郷に戻り、親元からこの曲登郷ゲーサンメド小学校に通っている子供たちが増えました。これは、特に食・住など日常生活の衛生面から親達が心配して引き戻したそうです。

子どもたちは、朝も昼休み後も授業前早くから、学校に来て自習し、遊び、放課後も先生を捕まえて質問しています。そして付近の人も参観に訪れます。今では、お寺に続く曲登郷の中心地となっていることに気が付きます。

新学期が始まり数日経って、曲登郷から理塘に戻る道程で、見覚えのある少年に会いました。三年生のその子に「明日、学校に来いよ!」と言うと、なんとも照れくさそうでした。父親も近い内に通わせると言います。その後も気にかかっていましたが、三、四日後に学校に現れました。遊牧生活では子どもにも、大事な仕事があり、家族の中での役割を一人一人が持っています。そのことも重要ですが、皆と絵を描いたり、勉強する時の楽しみ・集中力は、遊牧生活の中では、得られるものではないでしょう。その子は先生も認めるほど絵が得意なのでした。

四. 個人的な感想といくつかの問題点

衛生の問題は、広範な問題――今春から曲登郷に戻ってきて親元からゲーサンメド小学校に通っている子どもが数名います。彼らの親は、寄宿制の学校で起こった感染病を心配して引き戻しました。学習方面だけでなく、衛生方面も重要な事柄の一つに挙げられるでしょう。それに先立って、これからの課題は、現行のトイレの改善もしくは新設、食堂・宿舎での生活習慣になるでしょう。トイレの問題は、「高地での環境対応型の衛生的なトイレのあり方・し尿の処理の仕方」と言う面で大きなテーマであり、良い方法があれば、模範例として各地で利用される可能性も考えられます。

一人の地元出身の先生を通して――前年の工事に引き換え今回は、大変スムースに行きました。今回は直接曲登郷政府をカウンターパートとし、事業を行いましたが、理塘県教育局とも連絡を取り合い、情報を交換しました。ひとつには、曲登郷政府が県教育局に対し、より多くの関心を理塘随一の僻地の小学校にも向けるように要求することがありました。そして、夏と冬の休業期間中に小学校を管理する先生の条件を改善することを一つの柱としていました。維持管理をする先生の生活改善をすることが、今回のもう一つの課題でした。そのことが、持続可能な学校運営・校舎の第一歩とザシ校長と私は考えました。実際には、曲登郷政府に交渉し、郷の予算から、管理費を捻出することになりました。

 競馬祭の前後1ヶ月間と凍て付く冬の三ヶ月間、唯一小学校に常駐するのは、地元出身先生のヨントォ老師です。教育という概念が新しい地元の人地域にとっても、良い見本となる人です。学校運営、工事に関しても地元の人と交渉する時に、いなくてならない存在です。二〇〇二年開学当時からザシ校長と共に小学校に関わってきた彼を通して曲登郷の多くのことを知りました。

 そのヨントォ老師は、工事も終わって、最後に労を癒してやると言って、曲登郷の秘密の温泉に連れて行ってくれました。結局、車が3度もぬかるみに嵌って、危うく歩いて月明かりの草原を帰るところでした。斜面から沸き出るお湯を石で囲っただけの一畳ほどの小さな温泉は、今回の疲れを癒すには、十分でした。(おわり)

 


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――――チベットカム山岳研究同行会 烏里 烏沙 制作・2007年12月15日――――