Gesanmedo ――Tibetan Highlands Elementary School Construction Fund NPO

 

2005年度の活動へ向けて

小学校校舎建設、教室では授業が始まりました。

今年度は食堂、宿舎を完成させて、小学校の運営と子供たちの就学支援を!

SITE 齊藤祐子

 

いままでの活動を振り返って

小学校校舎建設という大きな目標を前に、一つ一つ問題に取り組みながら、昨年秋、無事完成を祝うことができました。最初から不安と緊張の連続でしたが、今はむしろ充実した一年間の活動として振り返る思いが強くなっています。

チベット式建築のように石を積むことで、大きな建物がかたちを現すように、いろいろな立場から、ひとりひとりの思いと力を集めて、この一年間の建設活動は支えられてきました。校舎が完成した現在、今後の学校の活動を支える姿勢を今まで以上に活動を広げていかなくてはなりません。

「日本から建設を支援することで何ができるだろうか。新しい技術、新しい建築材料で学校をつくることに意味があるのだろうか」それが最初の課題でした。そして、外部からの経済的支援で建設された建築の維持管理を続けることが現実に可能なのだろうか。そんな疑問から、その土地の材料、時間と環境の中で生まれ、育てられた工法と形、自力で維持することが可能な建築を建てることを提案して、チベット式で石積みの学校をつくるために研究調査を始めたのが、2003年でした。

 

 〈まず行って歩いてみることだ、立ちつくし目をみはり、耳をこらすことだ、心を白紙にして事象をそのままに受けとめてみることから出発する。〉

1965年、早稲田大学吉阪研究室のメンバーが伊豆大島の焼け跡に立って、

「〈焼け跡に放り出された自分〉を発見することであった。そして裸のまま、自らの目と足で島のあちこちを歩き廻っている内に、そこに〈私たちによって作り変えられるべき世界〉ではなく、全く逆に〈私たちひとりひとりがそれによって支えられている世界〉を発見することになった。」と〈発見的方法〉について語っています。

私たちは、この課題に向き合うために、吉阪隆正の〈発見的方法〉を手に、4,000メートルの高地での高山病の不安を抱えて東チベットに向かいました。学校建設にあたって、まず、標高4,300メートルの高地に立ち、チベット世界と出会うことから出発点しました。

 

9月、現地を視察し、建築の計画を進める中、教育局の協力は得られず、方向がなかなか見えない時期が続きました。けれど、日本では、学生の協力のもと、設計、模型制作の作業が着実に進んでいきました。

2004年4月着工、建設までの経緯は二転三転しましたが、着工から完成まで、教育局の協力を十分には得られず、現地のザシ郷書記兼小学校校長が、全面的に責任を持って建設にあたる状況をつくりました。現場担当の鈴木晋作さんの活動、責任、負担は考えられないほど重くなりましたが、地域の協力者と共に、実質的な建設活動を行うことで、今回の小学校建設が、地域と深く結びついた活動になりました。教育局の協力がないという困難が、むしろ幸いして、活動の方向を地域に結びつける結果になったと感じています。。

 

また、一期工事で3校舎が完成し、すでに授業が行われるなかで、建設工事を進めることは何よりも恵まれた大きな要素であったと思います。学校で学び始めた子供たち、熱心な若い先生方、そして意欲的なザシ校長。遊牧地域に学校の役割が根付き始めた中で、建設工事への子供たちの熱いほどのまなざしと、期待と協力、日常的な交流のなかで新しい教室の建設を進めることができました。

そして、遊牧地域の中心、曲登郷をたくさんの学生、NPO会員が訪ね、建設に参加しました。訪れたメンバーにとっては建設支援の場が同時に、人の顔が見える現場、自然との付き合い、生活と建築、学ぶ姿勢、学ぶ機会に触れることで、生活、つくること、学ぶことについてあらためて原点から考える貴重な経験になったと思います。

 

建設を支えたネットワーク

今回の建設は、鈴木晋作さんを中心に体制が組めたことが、何よりも大きな力になりました。鈴木さんは最初の調査に参加してからそのまま現地にとどまり、中国語を身につけ、4月から11月まで現場に常駐して建設にあたりました。曲登郷ではチベット語も修得し、職人、お坊さん、何よりの子供たちとのつきあい、信頼が篤く、ザシ校長と共に、工事を仕切り、要役を果たしました。同時に日本側では、調査から報告書、資料のまとめ、設計図の作成、ベースキャンプの役割を果たしながら、現場の鈴木さんと建設参加者のサポートにあたったSITEの槙由紀子さん、現場に長期滞在して活躍した森田大輔さん、そして、早稲田大学芸術学校、明治大学日置グループをはじめとする、たくさんのメンバーが実際に現地を訪ね、建設に参加したこと。和光大学関係の教育支援など、今回の建設を機会に、人と人の交流が具体的に活発に行われたことは何よりの収穫であったと思います。

 

今年度の活動

ゲーサンメド小学校の第二期工事が無事完成し、授業が始まりました。普通教室四、視聴覚室、図書室として、六教室は使われ、生徒125名、7人の常勤の先生がいます。

けれど、食堂、宿舎の内装、ベッドや布団、教師用の備品、食堂の整備は早急に整えるべき課題です。

ザシ校長からは、グランド整備、中庭の植栽、川との接点をつくりだす親水エリアの整備と安全柵の設置、維持管理、食費の補助、太陽光発電設備と、今後の課題があげられています。

私たちの課題は、冬を越した建物、雨期の屋根の維持管理。予算不足で使用された合板建具の耐久性を考え、無垢の建具に作り替えていく。また、何よりも、たくさんの人が集まって生活することで大きな問題になるトイレの改良について取り組みたいと考えています。

そして、政府の援助が十分に届かない地域へ、宿舎での食費、教材費等の支援等、継続的に教育を支援していかなくてはならないと考えています。

最初、東チベットについて何も知らなかった私たちが、今回の建設支援活動をとおして、何処までも抜けるような青い広い空と緑の大地、そして、一日の温度差が30度近くある、いつでも雪が降る厳しい気候変化。輪になってみんなが集まる広い広い草原での会議や音楽会。いろいろなことを経験しました。

これからも、交流を深めながら、今後は日本を紹介する活動も広げていきたいと考えています。

 


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――――チベットカム山岳研究同行会 烏里 烏沙 制作・2007年12月15日――――